2006年6月号
「暮らしと健康」
子どもの病気の悩み
軸性近視
Q.娘の近視が徐々に進む。軸性近視の可能性は?
7歳の娘のことで相談します。春の学校の眼科健診で左右とも視力が0.9だったため、近所の眼科で受診したところ、近視と診断されました。その後、徐々に視力は低下し、現在、両眼とも0.4です。もしかしたら軸性近視では、と気になっています。その可能性はあるのでしょうか。(栃木県 I・M)
A.可能性はあるので年に1回、眼軸長の測定を
眼球の角膜から網膜までの奥行きを眼軸長といいます。通常成人は24ミリ前後ですが、赤ちゃんは20ミリ程度です。小学校に上がる前の子どもたちの眼軸長は短いので遠視傾
向にあります。
眼軸長の伸展が軸性近視の原因
小学校高学年から高校にかけて身長の伸びと比例するように、眼軸長も伸びます。
24ミリを境にして、それ以上長くなると、網膜上でピントが合っていた対象物がその事前でピントが合うようになります。これが軸性近視の状態です。原因は、コラーゲン線維の変性による眼軸長の伸びと考えられています。
一般的には1ミリの眼軸長の伸びで、-3D (ディオプター)以の近視化が認められるといわれています。
予防する方法として、液状コラーゲンによる強膜保護手術がロシアのS・フィヨドロフやA・イワシナなどによって考案されました。
日本では、桐生の百瀬皓博士によって始められ、40例と少数ですが過去20年にわたり当院で実施し、経過を観察しています。
ミリ単位の眼軸長伸展予防の評価は、患者さんであるお子さんと、そのご両親の理解と協力がないと困難になリます。
学童期には年間1ミリの伸びが見られる場合、強膜保護手術が検討されます。手術は悪性近視の予防として重要と考えられていて、少し痛みがあるので小学5年生くらいにならないと無理かもしれません。
悪性近視になると、強度近視状態に加え、眼軸長の伸びによるさまざまな変化が網膜眼底にみられ、網膜剥離や網膜出血の原因になりかねません。
強膜保護手術はまだ一般的でありませんが、日本眼科学会が安全性と有効性の検討をすすめるように、会員としてはたらきかけたいと考えています。
悪性近視も防ぐことが可能
近視の状態は軸性以外に屈折性や混合性が考えられ、、このご相談内容だけでは簡単に判断できません。屈折性近視は、目に進入した光の曲がり具合が、角膜カーブが鋭いために強くおこる状態です。
眼軸張の伸びが予防されていれば屈折性近視として分厚いレンズのめがねをかけないですんだり、大人になってから各種近視レーザー手術や角膜形状を就寝中に装用するコンタクトレンズで矯正するオルソケラトロジーも有効な治療手段となります。
不安を解消するためにも、近所の眼科の先生に眼軸長を1年に1回、夏休みにでも診てもらうことをおすすめします。