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フラップレス・レーシックについて
近視手術友の会 会員
奥山公道 |
近視手術としての放射上角膜切開RK手術は1973年、レーザー角膜屈折PRK手術は1987年、それぞれ開発され、効果と安全性において20〜30年の実績があります。更に経過を観察中ですが、
医師と患者による長期的な協力が不可欠です。
その後レーシック手術が2000年、イントラレーシック手術が2001年、其々開発されました。
レーザー近視手術の代名詞レーシックは、ドア状のフタを作った後に角膜を削るのですが、(矯正面としてのレンズ深度が浅く?水晶体調節に負担が増し?)「矯正され過ぎ」との消費者庁発表が2013年12月にありました。(疑問符は、生体である角膜レーシック矯正面を光学レンズとしてのレンズ深度について未検証である為につけました。)
調節負担増加はどうして起きるのでしょうか。
次の図右のマルチプルステップ照射方式(McDonnel-Thompson共著カラーアトラスエキシマレーザー角膜屈折矯正手術、医学書院1994年)は、可変直径角膜切除によるPRKやフラップレス・レーシックによる矯正面が矯正移行帯を設けていることを示します。移行帯は、中間距離や近距離の視力に配慮し、術後の調節負担を軽減します。可変直径角膜切除は、強度近視矯正時に角膜切除量を少なくするとともに、術後の近視の戻りを少なくするために開発されました。ところが図左のシングルステップ照射方式は、やはりPRK用でしたが術後近視の戻りが大きくフタを作るレーシックに移行しました。理想としては、フタを作った後にマルチプルステップ照射をしたいところなのですが、角膜の厚さが不十分です。レーシックの場合フタを作リ実質を削るので、近視の戻りは少なくなりましたが、不十分な移行帯が術後の調節負担を増加させると考えられます。レーシックはPRKと異なり、近視の戻りが小さくなった分、調節負担による訴えが継続するのではないでしょうか。
消費者庁の指摘にある2009年頃から「矯正され過ぎ」に伴うドライアイ、頭痛、肩こりの訴えは、レーシック術数の右肩上がりの時期に多くなります。手術後の角膜解析結果が正常で、訴えに応じて神経内科医や精神科医が紹介される、いわゆるレーシック難民が生まれ、最終的に消費者庁へ駆け込んだのではないでしょうか。
フタを作らなかった2009年以前には、術後の過矯正を含む遠視はみられましたが、角膜解析上問題のない、「矯正されすぎ」による事象は記録されていませんでした。
特に注意したいのは、軽い近視で40歳以上の両眼同時手術についてです。
神様が目玉を二つお造りになったのは、両眼視機能の為だけでなく、リスク分散の意味も在るのかもしれません。眼科手術の王道は、片眼ずつの手術でした。
ドア状のフタを作るレーシックやイントラレーシックの問題点は他にもあります。フタを作ることにより角膜が弱くなり、作ったあとの土台に当たる口の部分がバラける角膜拡張症という、時には角膜移植を必要とする後遺症のリスクがあります。他方フラップを作らない方法もあります。
サーフェイスアブレーション(表層系レーザー照射)と呼ばれる、PRK、ラセック、フラップレス・レーシックです。
表層系レーザー照射には、ヘイズと呼ばれる一過性角膜混濁が付きものでしたが、代謝拮抗剤マイトマイシンC(MMC)の適量使用により、ヘイズ予防が可能になりました。
フタを作るレーシックか、作らないフラップレス・レーシックを始めとするサーフェイスアブレーションか、選択は患者様次第です。両方の動画を見比べて下さい。
近視手術の発端となったRKは実施後30年以上たち、危惧された失明もなく我国でさらなる長期経過の観察下にあります。今後とも近視手術の情報を提供し、友の会の活動に協力したいと思います。
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