ICL眼内レンズが 米国スター社により2025年3月29日朝日新聞閉じ込み前面に広告されました。
ICL眼内レンズ は1990年代、フィヨドロフ博士が開発した虹彩と水晶体の隙間にレンズを差し込み、近視等の矯正手術に使用する「目の中のコンタクトレンズ」です。
米国スター社が博士の特許を取得しました。
博士は60年代、白内障用眼内レンズを開発、多くの眼科医が博士に教えをこいました。
70年代、ダイヤモンドメスによる角膜放射状切開RK手術で近視、乱視の治療を開始、1,000,000人とも言われる患者様が手術を受けました。
80年代からエキシマレーザー手術、2000年にフェムトセカンドレーザー手術を始めました。
レーザー手術はレーザーで角膜の形を変えますが、IC Lは目の中にレンズを入れて近視、遠視、乱視を矯正します。
手術の選択は、リスク、効果、近視等の程度、そして費用で異なるでしょう。
25年前、当院の最強度近視の患者様にフィヨドロフ博士がICLを勧めました。眼内レンズによる矯正精度が高い事は理解しておりましたが、感染による万一の眼内炎による失明リスクや白内障の合併、緑内障の合併などを懸念した記憶があります。最近のICLレンズは小さな穴を設けて合併症を防ぐ工夫がされている様ですが大丈夫でしょうか。米中の近視手術の大半はレーシックかスマイルで、毎年800,000件程度、IC Lは数%と聞いています。一方、日本の近視手術数は銀座レーシック事件を境に、2009年の最大年間800,000件から年間10,000件以下に減少しました。特筆すべきはわが国の近視手術の総数は減少しているのに、ICL手術は増えていることです。
フィヨドロフ博士先見の明でしょうか。
レーザー近視手術減少の主な原因は経済面が大きいようです。近視手術はリピーターが少ない手術です。にもかかわらず使用する医療機械が設備を含めて1億円とも言われております。わが国の医療機械メーカーは10年ほど前にこの分野から撤退し、国産はありません。輸入機械や使用するネオンガスがウクライナ戦争や円安の影響で高価になった反面、手術料金が過去20年据え置きです。眼科医は技術料確保のため、高価な機械やガスよりもICLレンズにシフトしたと言われますが、レンズも高価ですので、真実は定かでありません。
いずれにしても、屈折矯正手術がフィヨドロフ博士のPRKに始まり、ICLに到達したのは興味深いことです。
薄い角膜、強い近視の手術にIC L眼内レンズ手術または切らないレーシックPRKが有効であるのは間違いないようです。