照明学会 高齢者の視覚特性と照明:お知らせ

国内初の近視手術専門医院・切らないレーシック
(旧 参宮橋アイクリニック)

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1997年12月2日

照明学会 高齢者の視覚特性と照明

カテゴリー: 学会 — admin

照明学会 高齢者の視覚特性と照明高齢者の視覚特性と照明条件
奥山 公道

1.はじめに

本稿は,先端医療技術開発研究会と照明学会との共催シンポジウム「どうする,どうなる医療照明・福祉照明」での講演内容をまとめたものである.
われわれは,視力や色彩は客観的であり,かつ一定のものであると思い込みがちである.しかしながら,眼科臨床の現場において時として患者より思いがけない指摘を受けることがある.一例を挙げると浮腫による散乱、フレアあるいは角膜混濁による透過率の低下を想起したい.典型として白内障がある.

2.白内障

白内障における水晶体置換手術後,視野がブルーがかっているという訴えが聞かれることがある.これは水晶体が除去されたことにより,散乱の強いブルーの光が強く黄斑部に到達するために起こることである.われわれは生誕時より次第に黄色みがかって物を見るようになる.これは角膜などが酸化の影響を受けるためである.原因として例えば紫外線であるが,高地民族のネパール人には短波長の紫外線による白内障が多発している.高地民族のみらなず,戸外で農作業を行う人々の白内障の発病率は高いことがよく知られている.
可視光線は380nmから780nmの間の電磁波であるが,最近UV400などと銘打って400nm程度の紫外線をカットするサングラスができているのは,上記の理由により白内障防止の役割を担わせるためである.すなわち紫外線カットにより過酸化状態を防ぐのである.白内障による(水晶体)混濁は光の散乱の原因となる.

3.光の散乱

レーリーの散乱の法則というのは,散乱体の大きさが波長に対して小さい場合を言うのである.よって散乱そのものの光散乱,散乱体が波長に匹敵する場合のミー散乱,レーリ一散乱の3種類のグラフを示す.
光の散乱という性質が濁った角膜や水晶体で起こり,それが網膜に到達する時に視覚上眩しいあるいは形状がぼやけるというグレア現象として捉えられる.また散乱や吸収により,最も敏感な黄斑に達する光の量が減少し,コントラスト感度が下がる。グレアやコントラスト感度という概念は従来の視力の概念とは異なるものであり,従来の方法では測定できない.

光の散乱

4.視力

従来の視力の概念とは,単純に一定の照度、距離のもと(5m,視表面照度200lx,室内照度500lx)で片目ずつ測定するものである.眼科的に言うならば,ランドルト環やスネーレン視力表を使って,5mから視認させる方法により遠方視力検査を実施し,30cmの近方視力は近方視力検査を行って視力を確認してきた.視力表による視力検査というのは,あくまでも一定の条件下で得られる測定値である.絶対的には被験者と視力を確認する物体との距馳が長ければ長ほど,そして物体が小さければ小さいほど視力が良いことになる.しかし現実的ではないので,日常の外来の検査では5mのランドルト環を使って視力を測定している.

視力検査表が読めない場合はいくつかの原因を眼料学的に考察せねばならない.人間の眼はよくカメラに例えられるが,カメラのピントを合わせるレンズの異常,これを屈折異常と呼んでいる.無限大の距離を,水晶体が安静にしている状態で見る力の状態を正視と言う.それに対し,物を見ている対象の事物の結像(焦点)が網膜の手前で得られる状態が近視であり,網膜より遠方で焦点が得られる状態が遠視である.また,部分的に水晶体や角膜の歪みにより網膜の前方あるいは後方に焦点がくる乱視の状態がある.近視は網膜の前方に焦点がくるのであるから,原因としては光が眼球を通過する時に過剰に屈折する屈折性の近視と,眼球自体の奥行が伸びて,角膜から網膜までの距離が延長し眼軸が進展する軸性近視の2つが考えられる.逆に遠視の場合は,角膜の表面が扁平である屈折性と,眼球の軸が短いことによる軸遠視の2つが考えられる.
新生児の眼軸長は20~21mmであるが,発育とともに伸び,18歳前後になると24mm前後になる.したがって5歳位だと遠視の状態ということが臨床的に広く認められるが,軸長の成長によって正視になる場合がほとんどである.しかし中には軸長23mm前後で遠視の状態が成人後も残る場合がある.

5.角膜屈折矯正手術

網膜の前方または後方で結像が行われる屈折異常を矯正する,角膜屈折矯正手術を行う本邦唯一の眼科屈折矯 正手術専門医療機関として14年前、1983年に参宮橋アイクリニックを設立する。
自分が5.5デイオプタの屈折性近視であったので,自ら手術を受け,しかる後,家族10人も手術を受け,安全性と有効性を1年間確認する。その上で一般の患者を対象として手術する眼科専門医療機関として開設する。
角膜屈折手術は1940年代に,順天堂医科大学の佐藤勉教授が発明する。
佐藤教授は円錐角膜の患者が治癒過程において,一時的に屈折異常が軽減されることにヒントを得る。
円錐角膜は角膜が通常は中央部の最も薄い部分で500ミクロンで周辺部が7~800ミクロンあるのに,中央部で400ミクロン以 下になることにより,中央部が突出する病気である。
進行すると,角膜の第4層のデスメ膜およぴ,第5層の内皮細胞を穿孔し,内部の房水が角膜実質内へにじみ出る。それにより,角膜のシャープな形が扁平化し,近視の状態が軽減され,視力の向上に結び付くケースがある。
佐藤教授は近視の患者に対して角膜の前方,あるいは後方から切開を入れることにより角膜の扁平化を図り,近視度を軽減する。
しかし、当時は角膜が5層からなることも、最内層に角膜内皮細胞が存在することも知られていなかった。角膜内皮細胞は,角膜よりさらに内側にある前房から前房水を汲み揚げて養分と酸素を吸収し,角膜実質内の老廃物を、排出するポンプの役割を担う細胞である。例えるなら木の根のような細胞である。

佐藤教授は角膜後面より切開を行ったため,「言わば木の根を剥ぐ結果」となり,佐藤式放射状角膜切開手術(旧 RK手術)は、数年を経て角膜に混濁をきたす結果となった.角膜移植を必要とする患者が,700名中170名発生したことにより,この手術は中断のやむなきに至る。
佐藤教授は1960年に他界する。
その後1960年になると,混濁した水晶体を除去して人工水晶体と置換する人工水晶体移植手術が盛んに行われるようになる。その際、前房固定人工水晶体レンズの一部が角膜内皮細胞障害を起こし,佐藤教授の旧RK手術後と同様の,水泡性角膜変性症が続出する。
これより,内皮細胞の存在意義が強く認識されるようになり,角膜内皮細胞に障害を与えない眼科顕微鏡手術が開発される。
1973年、恩師スビャトスラフ・ニコライビッチ・フイヨドロフ教授は,安全なフイヨドロフ式RK手術を発明する。
きっかけは,眼鏡をかけた少年が自転車に乗っていて転倒し、眼鏡のガラスが割れ,破片により角膜に切開が入り,治癒する過程で近視の視力が向上したことによる。
フイヨドロフ教授は、故佐藤教授の文献を調べ,内皮細胞を傷付けずに角膜矯正手術ができないかを検討する。1974年にフェイススリーの臨床手術が行われる。教授の功績は内皮細胞を傷付けづずに、角膜前面から放射状切開手術を定量的に行ったことである。
中央部の光学的に物を見るゾーンに切開を加えず、周辺部から傍中央部に4本から16本の放射状切開を一定の深さで,一定の長さに入れることにより,定量的な近視矯正に成功する。
切開の長さを変化させるため、教授は中央の光学域の大ききを変化させる。3mmから4.5mmまでのバリエーションと切開の本数、深さによる近視矯正のノモグラムを作成する。
フイヨドロフ教授は恩師であるのみならず,1983年には執刀医としてモスクワ顕微手術眼科研究所において,私の両眼の近視性屈折異常に対しRK手術をして下さる。
1987年、教授のもとで紫外線領域の熱を持たないエキシマレーザ手術が開発された。
フォトレフラクティブケラトトミーと呼ばれる、193nmの領域のPRK手術である。
本邦初のRK近視手術専門眼科・参宮橋アイクリニックが生まれ14年が経過 し8000眼のRK手術と,2000眼のPRK手術が行われる。RK手術は角膜をダイヤモンドメスで切開することにより,角膜周辺部を扁乎化させるが,PRKエキシマレーザ角膜切除術は,エキシマレーザにより分子間結合を分断し角膜中央部を蒸散させ扁平化させる。エキシマレーザエネルギーについては,粒子光学特性を使ったファントムオプティックスという領域で後に言及する。

次に視力の低下をきたす光学的異常状態は,角膜を含む透光体が濁るという現象がある。レンズのパワーの問題でなく,レンズ自身が混濁する。したがって眼鏡やコンタクトレンズでは矯正不能である.また,高齢者では白内障がこれにあたる。老眼鏡の効果がなく,窓際に立っている人の輪郭がポーツとにじんで見えるような散乱状態である.この場合はいくら高齢者に優しいといわれる照明を行っても視力は改善しない。
同様にカメラに例えると,フィルムに傷が付く状態として、視力低下する網膜あるいは視神経の疾病がある。代表例として、黄斑部変性症が挙げられる.円形の黄斑部変性症は老人に多く,視野が段々小さくなっていくような不安な状態が続き,失明につながる.ここでそういった高齢者や有疾病者に対しての照明の考察を行う.まず瞳孔の大きさについてであるが,瞳孔が小さく2mmくらいになると光の回折現象が起きてくる.回折という現象はその現象が起きる距離によりフレスネル回折、フラウンホーファ回折などが挙げられる.回折は光源を見た時の,グレア現象にあたる。

6.光の回折

回折

視力検査時は,明所では縮瞳するので水晶体の焦点深度が深くなり遠方視力が向上する.しかしながら,2mm以下では回折の影響を受けるので視力的には 4.0あたりが限界と考えられる.ところが数年前、参宮橋アイクリニックにアフリカ出身の芸能人が来院して8.0の視力が0・8に下がったと訴える。 8.0の視力とは,通常5mで一番下のランドルト環が視認できれば2.0であるのに,その4倍の距離の20mから一番下のランドル環が視認できることになる.理論的には可能であろう。視力における分解能力は視力表以前の問題であり,人間の視力における分解能カは,1分くらいまで可能である。また,前述の理由により,1分以下は無理である。
物を見る能力は,眼底黄斑部に散在する錐体とカン体、すなわち光の受容体に由来する。錐体の大きさは2ミクロンm 程度であり,錐体間の距離が小さいほど視力における分解能カは向上する.病理的に錐体が死滅してゆくと,錐体間の距馳が増大するため,受容体としての感度が低下する.よって,くだんのアフリカ出身の芸能人は,錐体がびっしりと隙間無く存在する目を持っていると考えられる。
カン体は周辺部の大まかな視覚と白黒のようなコントラストの認識にあずかる。コントラスト感度あるいは,グレア現象は視力表以外の手段により調べねばならない。ゆえにMTFと呼ばれる空間周波数関数を用いて表示する。これはコントラスト感度曲線により表され,y軸に輝度(コントラストの強さ),Ⅹ軸に周波数をとる。意味あいとしては周波数が低い部分でコントラスト感度が下がっている場合には.角膜を含め透光体に混濁があることが読み取れる。一方 周波数が高い部分でコントラスト感度が低下する場合は,網膜あるいはカメラでいえばフィルムの部分が障害されていることが読み取れる。

以上 カメラに例えるとレンズの汚れ,酸化による経時的変化となる水晶体、角膜の混濁、また,フィルムの劣化となる網膜,視神経の変性について述べてきた.既述のごとく,視力低下の原因は大きく分けて3つである。
しかしながら,結局は分解能力の劣化という点で同一である。
人間が生きとし生けるものであるからには,老化は避けられない。老化、言うならば経年変化を少しでも遅らせるには,照明が極めて重要な位置を占めることは論を待たない.少なく見積って人生の1/3は照明の下で暮らしている。オフィスワークの多い現代人は,ほとんどの人生を照明の下で送っていると言っても過言ではなかろう.

7.おわりに

この度、照明学会のシンポジウムに出席させていただき,高齢者収容施設を設計された照明のプロのお話が印象的であった。老人の精神心理状態に配慮した,直接、間接照明使用度の比率,特に間接照明に重点が置かれ過ぎていることで,全体が暗いという印象になり,適当なスポット照明が非常に重要となり、反省の時期が訪れているとの話であった。反面,廊下の天井にスポット光を使用すると,ストレッチャであおむけに寝ている患者さんの目を射ることになり,間接光でなければならない。同様に,段差があるフロアの境目に間接照明を使用するなどの細心の気配りについての話が印象深い。
理想の照明は,「薄曇りの太陽光(間接照明ではあるが非常に明るい)であるべき」との認識で参加者全員の意見が一致したように思う.

参考文歓

(1)西信元嗣:眼光学の基礎 金原出版(1990)
(2)坪田一男:近視を治す,講談社(1996)
(3)奥山公道:実技 角膜屈折手術 南山堂(1997)
(4)奥山公道:近視を治したいあなたに,三一新書(1994)

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